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CMでも話題のYKK-AP『顔認証キー』のドアリモを施工してきました。長文ですがレビューでも。

2022年10月03日

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画像アップがNGの案件のため施工写真等は掲載できませんが、テレビCMでも話題のYKK-AP顔認証の初めての導入事例をしてきました!
新しいテクノロジーは一旦世に出るとユーザーの声を取り入れながら日進月歩で進化していきますが、まずは施工会社としての立場からのレビューやよくある疑問などまとめていこうと思います。

ちなみに今回はドアリモという、玄関をたった1日の工事で新しくする商品でした。



【精度や使い勝手などに関するレビュー】
まず、気になるのは精度や認証時間(施解錠に要する時間)かと思いますが、基本的に顔画像認証という技術は30年以上の歴史があり、数多の研究者やITエンジニアが積み重ねた技術ですので製品化された現状では、まず十分に実用に値するだけの精度があると考えられます。
私の知るかぎりでは、10年ほど前は平面画像から顔を検出し認識するだけのため、例えば印刷した顔写真でも認識してしまっていたはずですが、YKKの顔認証の場合、登録時に正面・左右上下4方向の5方向からの顔画像撮影し立体的に認証するため、顔写真などには多分騙されないだろうと思います(検証していないですが)。
また、赤外線センサーもついていますので夜間などでも問題なく認証でき、実際に夕方の暗い時間帯のお施主様による操作においても問題なく認証ができていました。

一方、認証にかかる時間ですが、仕組み上は人感センサーによる認証機能の起動→顔画像取り込みと認証という2段階のセンシングとなります。
わかりやすく表現すると、
1)まず前に立つ。それによって人感センサーが人がいることを検知して、顔認証に入りますよというサイン(LED発光と『ピッ』音)を発する
2)その後顔認証し、認証できれば施解錠する
という段階を踏みます。
この一連の動作、時間にしてわずか数秒ではあるのですが、これが結構遅く感じる方もいらっしゃるのではないかと感じました。
ICカードやリモコンなどは以前からある商品で、電気の力でサムターン(鍵)を回すとき、『ピッ。ガチャ』ではなく、『ピッ、ジー、ガチャ』と回ります。(擬音ばかりですみません)。
基本的に最近の玄関は防犯のため上下の2ロックあるので、『ピッ、ジー、ガチャ、ジー、ガチャ』で施解錠となります。
多分、これだけでも遅いと感じる方もおられると思いますが、それに加えて人感センサーがサインを出すためにその前後時間が待たされ意識につながって、とても遅く感じてしまいます。
もしかすると、人感センサーが『ピッ』と言わなければそこまで遅く感じないのかもしれないとは思うのですが、このサインが無いと、仮にうまく人感できていないときもう1回離れてから近づく必要がある場合に、その必要性が認識できないという不都合が出ます。

また、顔認証は5~60cmぐらい離れた位置で静止が必要となります。
リモコンキーを携帯している場合、玄関から2~3mぐらいのところでリモコンボタンを押して解錠すれば、玄関前に着いたときには解錠されている状態になりますが、顔認証を使う場合、いずれにしても手前で数秒間一旦停止する必要があるので、どう考えてもリモコン運用の方が早いです。

なので、実用性のみで考えると、リモコンキーを操作できないぐらい両手いっぱいの荷物を持っていたり、リモコンキーがカバンの奥底にあって取り出すのが面倒だったり、そういうときにはかなりメリットを感じると思いますが、多くのケースではリモコンキーでの運用でいいんじゃないかと思ったりします。
あと、設定動作モードによりますが、リモコンキーを所持していない状態でも顔認証のみで入れる方法が隠しコマンド的に用意されているので、リモコンキーを出先に忘れてきたとか紛失したときに締め出し状態にならないというのはかなりの強みですね。

【今後の進化に期待したいこと】
まず、認証方法と速度向上。これは絶対に実現してほしいところです。
認証をウォークスルーでできるようして、立ち止まらずに鍵があいている、という状態にしてほしいです。
これが実現できたら遅いと感じることがなくなるだろうと思います。
立体的な顔画像認証では、これは結構技術的ハードルが高いかもしれませんが、是非実現してほしいところ。

それと学習機能による自動精度向上。
公式FAQによると、成長が著しい子供の場合、1年に1度ぐらい登録データを更新するのが望ましいとのこと。
通常、画像認識システムでは、画像点数が多ければ多いほど精度があがるはずなので、折角毎日認証するのであれば、その画像を学習してより精度をあげたり、成長に伴って自動で更新していけばいいのではないかと思います。
認証元データの登録手順はそこそこ煩雑で、しかも多くて1年に1回ぐらいしか機会がないため、再登録はかなりユーザ負担が大きい操作です。
できれば設置したらもうほとんど触らなくていい、という状態にしてほしいですね。

あとは、内蔵されている認証ソフトウェアの自動更新があるとよいと思います。
おそらく今後何年もかけてより精度の高いソフトウェアに更新されたり、あるいは万が一のセキュリティホールがあったりする場合、工務店もサッシ屋も、導入した1件1件を回っていくわけにもいきません。
できれば自宅のネットワークを経由して自動でソフトウェア更新するような機能があるとよいと思います。
ただ、これは逆にネットワークに乗ってしまうことによる危険性もはらんでいるため実装されていないのだろうなあ、とは薄々感づいているのですが。。。


【よくお客様に聞かれることやありがちなトラブルシューティング】
■■(トラブルシューティング)動作確認しようとしたら顔認識モードにならない■■
設置後、お客様と動作確認をするのですが、そのときに全然うまく動かない、という状態に何度かなりました。
問題が解決してからわかったことですが、これはには少し罠がありました。
登録作業や動作テストをする場合、玄関付近にとどまりがちですが、リモコンキーは玄関から2.5mの範囲内に1分以上放置すると、そのキーのボタンが押されるまでキーの存在を無視するように本体側で制御がかかります。
これは、玄関付近にリモコンキーを置き忘れた場合に、鍵がフリーになってしまう危険性を排除するためのセキュリティ機能です。
ですが、登録作業とか動作テスト中は、どうしてもそういう状態になりがちなため、そのリモコンキーを用いて施解錠のテストをしても動作しません。
この機能が働くために、『さっきはうまくいったのに、なぜ動いてくれないんだ!!』とちょっとしたパニックになります。
(施工側からするとお客様の前でこうなると、かなり焦ります

この機能のことを知っているだけで、かなりスムーズに動作確認ができるようになります。

■■(よく聞かれること)自動施錠されない。なんで?■■
これは顔認証キーだけでなく、スマートコントロールキーと言われる電子錠製品全てでよくある話で、サッシ屋あるあるです。
基本的に玄関の電子錠システムにおける自動施錠設定ですが、これは、『電気的に解錠した場合、その後自動で施錠する』という機能です。
つまり、『玄関内側のサムターンを手で回して解錠した場合は自動で施錠されない』です。
逆に言えば、『玄関内側からリモコンキーで解錠して外出した場合自動施錠される』です。

最初は戸惑いがちですが、理屈を考えれば簡単な話で、メーカーサイドとしては、鍵を持たずに外に出て自動施錠された結果締め出されてしまった。
という状況をなくしたいということです。(リモコンで開ける=鍵は携帯している、が成立するため)

上記の2点などは代表的な例ですが、『なぜこのような動きに?』という疑問が出るような事象については、それぞれ安全性の理屈があってのことです。


ということで、少し長くなりましたが、サッシ専門店による顔認証キーのレビューでした。
家の鍵、という大変デリケートな分野への新技術の投入ということで、とても慎重に実現されていることは間違いなく、今後も導入事例を増やしながらさらなる精度向上、市場拡大が見込まれています。
まずはYKK-APが先行しましたが、そのうちLIXIL、三協立山なども投入してくるのでしょう。

もし、このブログを読んで顔認証キーの導入の検討をして頂けるようでしたら幸いです。

※本記事は筆者(文責:スリースター藤野)の推察、個人的感想を多分に含んでおり、メーカーの公式見解などと異なる可能性がありますので予めご了承ください。
※万が一、何か間違いがある場合、お問い合わせページからご指摘など頂戴できれば幸いです。適宜対処致します。